透明でキラキラした音色。それが寺沢希美さんのヴァイオリンだ。
子どものころ、美しいドレスやお菓子にあこがれるように、たとえば映画で流れた美しいクラシック音楽にあこがれ、愛しはじめた人はたくさんいると思う。寺沢さんのヴァイオリンを聴くと、そのころの気持ちを思い出す。美しいことに衒いがなく、楽しげでありながら、ソリストとして積み重ねてきただろう艱難の深みもひとかけら。まるでモーツァルトの音楽のようで、ザルツブルク音楽祭でデビューという経歴にも納得してしまった。
これまで『Mozart』『Mendelssohn』とひとりの作曲家を追求してきた寺沢さんの新アルバムは『Lovely』。その名のとおり、魅力的で多彩な音楽が集まった。アイルランド民謡の「ロンドン・デリーの歌」でスタートし、ヴァイオリンの定番曲からオペラの名アリア、伝統曲から映画音楽までを華麗に横断。最後はモンティの「チャルダッシュ」で締めくくる。おはようからおやすみまで、毎日をキラキラの音楽で満たしてくださいね。そんな寺沢さんのメッセージが、聴こえてくるようだ。